スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私は『桐島、部活やめるってよ』を観た(ネタバレあり)

903b92124f2169ccdda5606d9a39e7d6.jpg
あらすじ: とある田舎町の県立高校映画部に所属する前田涼也(神木隆之介)は、クラスの中では地味で目立たないものの、映画に対する情熱が人一倍強い人物だった。そんな彼の学校の生徒たちは、金曜日の放課後、いつもと変わらず部活に励み、一方暇を持て余す帰宅部がバスケに興じるなど、それぞれの日常を過ごしていた。ある日、学校で一番人気があるバレー部のキャプテン桐島が退部。それをきっかけに、各部やクラスの人間関係に動揺が広がり始めていく。

『桐島、部活やめるってよ』予告編はこちら




タコ的点数:88点




さて、最初に言っておきましょう。
高校時代に<上位>グループにいた、もしくは、自分は<上位>グループにいたと思っている人は、この映画を本当に楽しむことはできません。
と、言い切ってしまうのもいかがなものかと思うのですが(笑)
少なくとも、なぜ桐島が部活をやめたのか?という視点で観ていてはいけません。ラストであっけにとられてしまうでしょう。
ちなみに、同じ会場にいた他のお客さんの多くは「どういうこと?」と首をかしげながら劇場を後にしていました。ただのさわやかな青春映画だと思って観ていると、痛い目にあうかも知れません(笑)
タコは原作未読ですが、非常に楽しめました。

342041view006.jpg


この映画で描かれるのは学園内に存在する目には見えないヒエラルキー
<上位>・・・部活の主要選手だったり、クラスでも目立つ、イケイケの生徒たち。
<下位>・・・クラスでは地味で<上位>の人間からバカにされる、オタクのような生徒たち。
このどっちにも属さない<中位>のような人もいたような気もしますが、おおざっぱに分けるとこんな感じです。タコは、学生時代には<下位>にいたような人間だったと自覚しております。
この、<上位><下位>の関係が残酷なまでにリアルに描かれているんですよね。「あぁ~いたいたこんなやつ!!」とか「あぁ~自分にもこんな経験あるわぁ~」とか、過去の記憶に突き刺さるようなエピソードの数々を観ていて、不思議と「苦面白い」ように感じるんですよね(笑)

342041view002.jpg


登場人物がたくさんいるのですが、それぞれにキャラ付けがしっかりとされていて、少なくとも誰が誰かわからなくなるようなことはありません。個人的には、神木隆之介君演じる前田はかなり好きなキャラです。というのも、彼は根っからの映画オタクでジョージ・A・ロメロとかタランティーノの話を熱心に語るシーンなんかは、同じ映画好きとして思わず微笑んでしまい、非常に好感をもてましたね(笑)
ちなみに、タイトルにもある桐島は作中には一切出てきません。ただ、<上位>グループにいた桐島が消えた、という事実だけがあるだけです。(”<上位>グループにいた”桐島が消えた。これ、この映画のポイントですよ(笑))

ポスターにもある「全シーン全カットを見逃すな!全登場人物、全時間がラストに繋がる!」というのは、ウソじゃないですね。リアルな高校生活を外側から観るせっかくの機会(笑)全ての登場人物を注意深く観察して観るべし(笑)
ラストの映像を観て、あなたはいったい何を思う!?(笑)










以下ネタバレ

あくまで個人的解釈です。
結論から言うと、この映画は生徒たちの”アイデンティティの崩壊”が描かれているのだと個人的には考えています。そして、この映画の隠れた主役は野球部の幽霊部員、東出昌大演じる菊池宏樹であり、彼が”自分”というものが無いことに気が付き挫折してしまったというところで映画は幕を閉じます。詳しく書きましょう。

まず桐島という存在はいったいなんだったのでしょうか?
映画で語られる桐島。彼はバレー部のキャプテンで県代表に選ばれるほどの実力。成績も優秀。桐島の彼女は校内でもトップクラスに人気の女子。それ以外は何も語られません。しかし、彼は校内でも<上位>グループの中でも一際注目を集める人物だったことが想像できます。彼の存在というものは<上位>グループにとって重要なものでした。あるものにとっては、「桐島の彼女である」という”自分”を証明する人物であり、あるものにとっては「桐島の親友である」という”自分”を証明する人物であり、あるものにとっては「桐島と共にプレーするチームメイトである」という”自分”を証明する人物であり・・・etc。<上位>グループは、桐島という人物を通して校内での”自分”を認識していたのだろうと考えられます。ある意味、<上位>グループの人間にとって桐島は”神”のような存在だったのでは・・・というのは言い過ぎかもしれませんが。

桐島が”<上位>グループにいた”というところがポイントだと前述しましたが、桐島がいなくなったことが原因で人間関係や普段の生活が破綻していったのって<上位>グループやそれらの人間と親交のあった人間だけなんですよね。一方、<下位>グループ(この映画では主に映画部)は、桐島がいなくなったことに関しては無関心。彼らにとっての目前の問題は「撮りたい映画が撮れない」ということなのです。

さて、全編わたって”桐島”がいなくなったことで崩れていく日常が描かれ、ラストには桐島がいるかもしれないと<上位>グループが映画部が撮影する現場にぞろぞろとやってくるわけです。映画部は、<上位>の身勝手な行動で撮影を邪魔され、手作りの隕石も壊されてしまいます。土足で<下位>グループの領域に踏み込んできた<上位>グループに対して、神木隆之介君演じる前田涼也は反撃をしかけるわけです。
ここからが誰もがあっけにとられる展開。なんと、8ミリの映像の向こうにはグロテスクにゾンビに食われる<上位>グループの面々が!!ついでに言えば、そのバックで流れる音楽は<上位>の菊池宏樹に思いをよせながらも、残酷な形で失恋してしまった<下位>の沢島亜矢の所属する吹奏楽部の演奏。
一体、これは何を観ているんだ!?この謎は、同じ時の菊池宏樹のパートで明かされます。

菊池宏樹が屋上に行く前に野球部キャプテンに会います。そこで、「なんでまだ野球なんてやってるんですか?」聞く宏樹に対してキャプテンは「ドラフトが終わるまでやろうかな・・・と思って」と答えます。もちろんキャプテンはスカウトの目にかかるほどの実力はありません。なのに、まだ野球を続けようとしている。宏樹は理解できません。その後、屋上での騒動の後、カメラの部品を拾った宏樹が涼也に問います。「将来はアカデミー監督?」それに対し、涼也は「それは、無いです」と答えます。
涼也がなぜ映画に熱心なのか?それは、叶わないであろう夢と自分の撮っている映画が繋がっているかもしれないという感触があるからなのです。これは先ほどのキャプテンとのやりとりにも通じます。また、吹奏楽部の沢島亜矢にも、吹奏楽に対する思いがあり「部長の私がふらふらしてちゃダメなの!」と残酷な光景を見とどけ、練習に向かいます。つまり、彼らは自分が何に夢中になれるのか、何に対して情熱を注ぐのか、ということを自ら理屈と共に理解しており、これこそが”自分”であるということを知っているのです。あのゾンビ騒動(そのあと映画部が正座させられてるところから、バレー部の奴らにコテンパンにされたことがうかがえますが)は、”自分”を持つ<下位>の生徒たち、つまり映画部と吹奏楽部によって作られた、桐島がいないことで”自分”を見失い不安と虚無感に満ちた<上位>を事実上「食い殺した」ことを暗示する映像だったのではと考えています。もしくは、吹奏楽部の後輩が「今の演奏最高じゃなかった!?」と言っていたように、涼也にとってもあのゾンビ映画は彼の中にある最高の映像だと考えられます。あのゾンビ映像は最高の自己表現の形で<上位>を圧倒したということを示唆した映像、と考えてもいいかもしれません。

その後、逆に質問する形で涼也からカメラを向けられる宏樹は泣きながら屋上を後にします。部活にもほとんど顔を出さない、自分は何に情熱を向けるのか?その方向性がわからない。”自分”とは何かがわからない。そのことに気づかされた宏樹はさらなる不安に陥ります。そんな中、彼は頼みの綱である桐島に電話をします。
・・・桐島にもつながらない。・・・向こうには練習に励む野球部の姿。
彼の不安は解消されないまま、映画は幕を閉じるのです。

という、なんとも悲しい終わり方だったのですが、この映画の中で唯一生き方を変えようと決心し、前に進めるのは宏樹だけでしょう。そういう意味では、ハッピーな終わり方だったのかもしれません。


と、長々とここまで読んでくれた方には感謝したいです。
細かいセリフとかうろ覚えなので間違ってるところもあるかと思いますが、ご了承願います(笑)






20120819144749.jpg



関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

No.686 『桐島、部活やめるってよ』

2012年制作 邦 監督:吉田 大八 ≪キャッチコピー≫ 『全員、他人事じゃない。』 ≪ストーリー≫ とある田舎町の県立高校映画部に所属する前田涼也は、クラスの中では地味で目

桐島、部活やめるってよ

リアルで瑞々しい学園ドラマ。 悩んで、もがいて、楽しんで・・・ とても面白かったです! 監督:吉田大八 製作:2012年 日本 上映時間:103分 原作:朝井リョウ 出演...

コメントの投稿

非公開コメント

タコさん、こんにちは!

とても熱く語っていて、タコさんがこの映画を好きな事が良く分かります。
かなり細かく分析しましたね~☆

まだ若いタコさんと、青春時代からかなり離れた私とで、
感想が随分違っているのかと思ったら、
割と同じような気がしました。
タコさんの書いた内容はとてもよく理解できますよ。
元々、たいしたアイデンティティの無かった人間は
影響力の大きかった桐島が消えた事で、それが崩壊してしまう。
大切なのは、情熱を注げるものがある事ですよね。

ゾンビ映画は、妄想でなくて、本当に撮って欲しかったなあって
思いました。

Re: タコさん、こんにちは!

YANさん、いつもコメントありがとうございます(^^)

かなり細かく書いてしまいました(^^;)
人とこの映画について話すのも楽しいんですよね(笑)
原作者の朝井リョウさんが僕と同世代なので、
僕らの年代特有のことなのかなと勝手に思っていましたが・・・(失礼しました(笑)

僕は恥ずかしながら学生時代は地味な人間だったと思うのですが、
それでも当時は「何よりもこれが好きだ!!」って
それこそ情熱を注ぐものがあって、
でも、そんな学生生活で良かったのだろうかと思うこともありましたが、
この映画を観てそんな自分の生き方も間違っちゃいなかったんだと
勇気をもらった映画でした(笑)

> ゾンビ映画は、妄想でなくて、本当に撮って欲しかったなあって
> 思いました。
僕は妄想だったからこそ、映画部をコテンパンにした(つもりになってる)<上位>グループの面々を
心の中でクスクスと「勝った」と笑えるので・・・あ、性格悪い考え方ですかね?(笑)

プロフィール

タコ

Author:タコ
映画が大好きな一人の男。映画に関して思いついたことを書くだけの緩いスタンスでやっていきます。
文章力に自信はないので、非常につたない文章になっているかとは思いますが、読んでいただいて映画選びの参考にしていただけたら光栄です。

※コメント無しで、TBのみ送ってくる場合は承認しないようにしています。
また、内容が酷いと思われるコメントも独断で削除させていただきます。悪しからず。



~映画レビュー採点基準~
100点…必見!!ですが、作品によってはトラウマになったりする可能性あり。
81~99点…必見!!
61~80点…観る価値あり!!自信を持ってオススメ。
41~60点…まぁまぁ良作。暇なときに観ればいいのでは?
21~40点…別に観なくてもいいかと・・・。
0~20点…ダメすぎて話のネタになることもあり得る映画。




YouTubeで趣味で作曲もしてます。「Modernmonkey100」で検索して遊びにきてください。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
訪問者数(2/17~)
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。