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私は『その夜の侍』を観た(ネタバレあり)

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あらすじ:小さな鉄工所を経営する中年男の中村(堺雅人)は、5年前に木島(山田孝之)が起こしたひき逃げ事件で最愛の妻を失ってしまい、抜け殻のようになりながらも復讐(ふくしゅう)することだけを考えて日々を生きていた。やがて、刑期を終えて出所した木島のもとに、復讐(ふくしゅう)を遂げる日までのカウントダウンを告げる差出人不明の脅迫状が届くようになる。そして妻の命日の夜が訪れ、ついに中村と木島は対面を果たすが……。


『その夜の侍』予告編はこちら




タコ的点数:70点




単なる復讐劇かと思いきや、非常に難しい映画ですね。様々な解釈の余地が残されていて、観る人ごとにいろいろな感想を持つでしょう。難解なのですが、何かしら引っかかるものがある映画です。

堺雅人さん演じる夫・中村は、妻を亡くして以来完全に心の壊れた人となってしまいます。生前の妻の留守電を何度も再生し、妻の下着を常に持ち歩き、包丁を持って刑務所から出てきたひき逃げ犯を追い続けます。一方、山田孝之さん演じるひき逃げ犯・木島は最低のクズ人間。ひき逃げをする際も一切悪びれる様子はないし、こいつは善悪の区別もつかないのだと思わせる奇行の数々。
しかし、この映画に出てくる人々はみんなどこかオカシイのですが、なぜかそれでも妙にリアリティがあるんです。おそらくは、こういったドラマが特別なことではなく、意外と身近にあるのだろうということを、どこかで悟っているのかもしれません。

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特筆すべきは、ひき逃げ犯である木島の周りにいる人々。(ややネタバレ→)こんなにもクズな人間なのに、木島に対して周りの人間はなぜか協力的なんです。中には「あいつには、俺が必要なんだよ!」と言ってしまう人も。
木島の恐ろしさにビビって、やむなく協力しているとも考えられますが、おそらく常人では考えられない圧倒的な暴力をふるってくる木島に対して、尊敬のような、魅力のようなものを感じてしまっているのでしょう。ストックホルム症候群(※)に近いものがあるかもしれませんね。
安藤サクラさん演じる風俗嬢が「暇だから風俗やってる」というようなことを言いますが、おそらくはこの映画の登場人物のほとんどが似たような感情を持って日常を送っていたのでしょう。タクシー会社のおじさん、かつての親友、警備員・・・彼らのバックグラウンドなんかはほとんど語られませんが、ほとんどの人が想像しているような日常を送っていたのだと思います。そんな中であった、凶悪なクズ・木島を通して退屈な「自分」の存在理由を明確化したかったのではないか・・・と僕は思っていますが、うがった見方でしょうか?

(※)・・・精神医学用語の一つで、犯罪被害者が、犯人と一時的に時間や場所を共有することによって、過度の同情さらには好意等の特別な依存感情を抱くこと。たとえば、誘拐された人が誘拐犯にどれだけひどい仕打ちをされても、一言優しい言葉をかけられたり少し弱みを見せられたりするだけで、誘拐犯に対して同情心のようなものが芽生えるとことがある。


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ラストは、とうとう二人が台風の中公園で出会うことになるのですが・・・この結末に対して皆さんはどのような感想をもつでしょうか?
リアルな人間描写に匂いさえ立ち込めてくるような映像。登場人物たちの背景をあえて薄く描き、巧みに深みを持たせた作品。安易な娯楽として楽しむには少々ハードルは高いですが、それでもオススメしたい映画。
いやぁ、それにしても『悪の教典』の時と言い、山田孝之さんがクズ人間演じるといい味出しますねぇ(笑)

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以下ネタバレ

ここからは僕の個人的解釈です。
さて、夫・中村が木島を殺すことなく、また自分も殺されることなくこの一件を完結させることができたことは、僕は”救い”だと思っています。
中村は一か月ほど、木島の生活を追っていたわけですが、ラストでも語られるように木島は「特に何も考えず、なんとなく生きていた」わけです。そんなクズの木島を殺すことで、はたして自分の復讐の物語は見事完結できるのか?そんなことを考えていたのかもしれません。
「こんなクズを殺して、自分の物語が完結するはずがない」そんな思いを確信に変えたのが、風俗嬢の「暇だから風俗やってる」という発言でしょう。この風俗嬢と木島はおそらく同じような人間なのです。クズで何も考えずに生きている人間。僕は、この時点で中村は木島を殺すことを止めたのかもしれません。
そして、復讐決行日。木島の前に現れた中村は、おそらく逆に殺されようとしていたのかもしれません(中村の「俺を殺せ!二人殺せばお前は確実に死刑になる!」という言葉を本心だと考えた場合)。しかし、それもかなわず(木島が中村を殺さなかったのは、ホントに死刑になるのが嫌だったのか、ただ単にその気にならなかっただけなのかは定かではありませんが・・・)。彼は結局、生き残るのです。
さて、復讐決行日に殺すことも殺されることもできなかった中村。おそらく、復讐決行という”期限”を設けていたことが幸運だったのか、復讐の呪縛から解放され、”生きよう”とするわけです。煙草もやめて、プリンを食べることもやめて、妻からの留守電も消去して”生きよう”とするのです。帰り道で、お見合いをしていた女性に誘われなかったとしても、彼は”生きる”ことを決意したのです。「この日にやってやる!」という日に、何もすることができなかったという事実が、彼をすべてから解放したのです。
人間の強さというか、運命というか、言葉ではなんとも形容しがたい”生きていく人間の姿”というものを見せつけられたような気がします。




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No.709 『その夜の侍』

2012年制作 邦 監督:赤堀 雅秋 ≪キャッチコピー≫ 『愚かに、無様に、それでも生きていく。』 ≪ストーリー≫ 小さな鉄工所を経営する中年男の中村は、5年前に木島が起こした

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こんばんは。

タコさんこんばんは。

今作は俳優さんたちがめちゃくちゃ頑張っていたように感じます。
堺雅人もそうですが、タコさんも書いています山田孝之のクズ人間っぷりは
いい味出していましたね。
他にも、新井浩文、綾野剛、田口トモロヲ、谷村美月、高橋努、安藤サクラ等々。
特に高橋努は良かったですねぇ。

ストーリーについてですが、タコさんのややネタバレ部分に書いている
「凶悪なクズ・木島を通して退屈な「自分」の存在理由を明確化したかったのではないか」
と言う部分。
まさしく同意です。
親友の小林は少し違うのかなと思いますが、星や関なんかはそれにあたるのかなと。

今作、妙にリアリティがあるんですよね。
それだけにゾッとするというか。

とにかく見応えのある作品でした。

Re: こんばんは。

ゆず豆さん、コメントありがとうございます。
返事が遅くなって申し訳ありません(><;)

>今作は俳優さんたちがめちゃくちゃ頑張っていたように感じます。
たしかにそうですね。味のある俳優さんがそろった中、
誰もが心情的に難しい役どころだったと思うのですが、
みなさん見事に演じきられてましたね。
登場人物たちの心中を読み取るのが難しいので、観ているこちらも困惑しながら観てましたが・・・(笑)
たしかに見ごたえのある作品でした。

>「凶悪なクズ・木島を通して退屈な「自分」の存在理由を明確化したかったのではないか」
>と言う部分。
>まさしく同意です。
ありがとうございます。
この記事を書いた後に
”本当に自分が彼らの立場になっても同じことになるのか?”
と考えると少し自分でも疑問を感じたんですが、同じ感想を持った方がいて安心しました(笑)
カリスマ性、とも違うし、恐怖、とも違う。どう形容すればいいかわからないこの感情・・・
普通に生活していれば、一生味わえない感情なんでしょうねぇ・・・。

>今作、妙にリアリティがあるんですよね。
>それだけにゾッとするというか。
他の方のブログでは、よく「尼崎連続変死事件」と比べて記事を書いているのを見かけました。
”共犯者”ってこういう風に生まれてくるんだなぁ・・・と僕は感じて、とても怖かったです。

プロフィール

タコ

Author:タコ
映画が大好きな一人の男。映画に関して思いついたことを書くだけの緩いスタンスでやっていきます。
文章力に自信はないので、非常につたない文章になっているかとは思いますが、読んでいただいて映画選びの参考にしていただけたら光栄です。

※コメント無しで、TBのみ送ってくる場合は承認しないようにしています。
また、内容が酷いと思われるコメントも独断で削除させていただきます。悪しからず。



~映画レビュー採点基準~
100点…必見!!ですが、作品によってはトラウマになったりする可能性あり。
81~99点…必見!!
61~80点…観る価値あり!!自信を持ってオススメ。
41~60点…まぁまぁ良作。暇なときに観ればいいのでは?
21~40点…別に観なくてもいいかと・・・。
0~20点…ダメすぎて話のネタになることもあり得る映画。




YouTubeで趣味で作曲もしてます。「Modernmonkey100」で検索して遊びにきてください。

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